放課後、土屋が家までついて来た。「歴史的瞬間を市本と分かち合う」つもりらしい。
別に断る理由はないので土屋を引きつれて商店街へ回り、ここぞとばかりに商品を買い込もうと思った。
が、商品はあまりなかった。
なんでも、不安に駆られた人々(おばちゃんたちらしい)が日持ちのする商品はあらかた買い占めてしまったそうだ。
「嬉しいような悲しいような、複雑な気分やね」
八百屋のおじさんはそう言ってビニール袋を手渡してくれた。
商店街から家に抜ける道は、細い上に灯りが少なく人通りも多いとはいえないので、暗くなり始めると近くでもよく見えなくなることがある。
通り同士も、細い道が何本も交差していたり行き止まりがあったりと、住み慣れていない人は迷ってしまいそうな道だ。
「おっかない道だな。危ないおっさんでも出そうなところだ」
土屋はキョロキョロしながら俺のあとをついてくる。その挙動不審ぶりは、きっと端から見たらかなりアブなく映るのだろうが、あえて俺は何も言わなかった。
「約一ヵ月後に世界は、滅びるだろう」と。
俺は、無意識に呟いた。「んなこと言われたって、何か変わるのか…」
土屋は、小声で呟いた。「ファイターズラウンド終わるかなぁ」
ファイターズラウンドは、土屋が今ゲーセンで特訓中の格ゲーの名前だ。つまり、俺たちにとっては地球が滅びることということは、それだけのことだった。
このときは。
"Riven",a tiny love story's here