案の定、次の日の学校はまた大騒ぎだった。
H.Rは10分以上遅れて始まった。担任の鮫島は入ってくるなり机をバンバン叩いて教室中を静め、そして言い放った。
「学校は明日からは自由登校だ」
歓声。
椅子から立ち上がりガッツポーズをする生徒たち。
俺はその様子を、ほおづえをつきながら何とはなしに見ていた。
鮫島が再びバンバン机を叩いて教室を静める。
……
いつもと同じような光景だ。
「自由登校になるのは生徒だけじゃない。教師たちも自由登校になる。それから、食堂と購買は閉鎖されるから、その点だけは注意するように。自分で必要なものは学校に来る前に買ってくるように」
(買えるだけ、モノがあればな)
俺は声に出さずに呟いた。
「センセー。教師が学校来てなかったらどうなるんですかー?」
「そういう時は自習だ」
……
要するに、学校側もやる気がないということだろうか。まあ、あと一ヶ月で何もかもが終わりだとすれば、いまさら勉強する必要も教える必要もないが。
「今日はちゃんと授業があるからな。しっかり席に座って先生を待っているように」
そのあといくつかの連絡事項を伝えて、鮫島は足を鳴らしながら出て行った。
「なあ市本、お前明日から学校来るのか?」
土屋が聞いてきた。
「ほかにやることもないしな。授業があるときもあるんだろ」
「そっか。なら俺も来ようかなぁ」
「毎日ゲーセンに行ってファイターズ何とかをクリアするんじゃないのか?」
俺の問いかけに、土屋は頭をかきながら言った。
「うん…なんつーかさ。ゲーセンは確かに楽しいんだけど、学校があって、その後の帰るまでの間にちょっと遊ぶのがいいんだよな。一日中遊んでるのもそれはそれで飽きるし」
「なるほど…」
たしかにそれは言えるかもしれない。
「まあ、一日中やってるだけの金もねーしな」
机にへたり込みながら土屋は言った。
「こりゃ無理だな」
食堂に入るなり、さすがにげんなりして思わずつぶやいてしまった。
食堂は今日で閉鎖されることもあってか、前代未聞の大盛況だった。
「買えそうなもんはパンぐらいか…」
人ごみの中に分け入って、手に触れるパンを三つばかり掴み取り何とか会計を終えると俺はすぐさま食堂を後にした。
「教室で食うかなぁ」
ぼやきながら階段を上っていく。2年の校舎は2階にある。2階に着いた時、見覚えのある後姿が階段を上っていくのが見えた。
(河合だ…)
上に行くとなれば、1年に用があるのか、それとも…
(屋上で食べるのも悪くなかったな)
俺は予定を変更して階段を上り始めた。
"Riven",a tiny love story's here